【新型RX試乗】オススメはRX500h。走りはライバルと互角以上もインテリアが惜しい
掲載 carview! 文:伊達軍曹/写真:市 健治 208
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「もっとも売れているレクサス」であるラグジュアリークロスオーバーSUV、レクサス「RX」が2022年11月、5代目(日本市場では3代目)へとフルモデルチェンジされた。過日開催された公道試乗会での印象をお伝えしよう。
まず乗ったのは、最上級グレードである「RX500h “F SPORT Performance”」。パワーユニットは、最高出力275psの2.4L直4ターボエンジンに同87psのフロントモーターを組み合わせ、リアにも同103psの高出力モーター「eAxle」を搭載したハイブリッドシステム。システム最高出力は371psで、トランスミッションは6速ATだ。
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エクステリアデザインでは、まず特徴的なのは「スピンドルボディ」ということになるだろうか。
従来のレクサスは「スピンドルグリル」によって、つまり文字どおりグリルの形状によってレクサスの象徴である“スピンドル”を表現していたわけだが、新たな「スピンドルボディ」は、ボディとグリルの境界を融合させたシームレスな表現のなかでスピンドルを表現。グリル部分のグラデーションによる数理的な美しさと併せ、ここはなかなか洒落ているように思える。
従来型よりもホイールベースを延長し、さらには低重心化と前後トレッドの拡幅も行われたせいか、全体のフォルムは“踏ん張り感”が感じられるものとなり、後部ドアからリアフェンダーにめがけて力強く張り出す面構成にも、力強さと上質さがある。
さらにフロントの三眼フルLEDヘッドランプの造形も――個人的な印象としては――従来型以上に洗練されており、リアのコンビネーションランプも今どき流行りの「横一直線のシンプルな構成」とすることで、力強く低重心な構えに。総じてエクステリアは、ラグジュアリークロスオーバーSUVのトップグレードにふさわしい風格とセンスが感じられるものだと評していいだろう。
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だがインテリアは、14インチの大型センターディスプレイが見やすくて使いやすいのはいいのだが、いかんせん造形としては少々野暮ったい。
そのほかの部分も、使われている素材はさすがに上等なのだろうが、いわゆるひとつの“洗練”は感じない。このあたりを「野暮ったい」と取るが、「日本車らしい落ち着きがあって好ましい」と感じるかは、人それぞれの感覚によるだろうが。
だがこの最上級グレード、走らせてみれば、さすがにすべてが極めて素晴らしい。
基本となる車体骨格はトヨタの新世代プラットフォーム「GA-K」を大幅に改造したもので、後輪サスペンションを4リンクのダブルウィッシュボーンから5リンクのマルチリンク式に変更。それに伴って、後部座席より後ろのフロア回りは全面的に刷新されている。
それもあってか、レクサス RX500h “F SPORT Performance”の四輪はどんなシーンであっても執拗に路面をとらえ続け、なおかつ“極上”とすら言いたくなるほどの乗り心地の良さをキープする。
そしてそのうえで、2.4L直4ターボエンジンに高出力モーター2個を組み合わせたハイブリッドシステムが吠える。いや実際には吠えおらず、2.4Lターボエンジンの4気筒特有のノイズは「アクティブ・ノイズ・コントロール」によって巧妙に除去され、そこに「アクティブ・サウンド・コントロール」による人工音がまぶされているわけだが。
だがその音が人工的なものであろうとなかろうと、ドライバーの意思にきわめて忠実に大パワーと極太トルクが炸裂し、なおかつマルチリンク式後輪サスペンションがよく動くなかでリニアに聴こえてくるその音は、クルマという乗り物を愛好するタイプの人間にとっては「天上の調べ」だ。
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もちろんタウンスピードで流している際などは、レクサスならではのひたすらな静粛性と快適性が際立つばかりなのだが、遠出をする際などに山岳セクションに差し掛かった際には、SUVとしては最高レベルの“ファン”を感じることができるだろう。
なお、今回RX500h “F SPORT Performance”は2.4Lのターボエンジンを採用したことで、アクセルを踏み込む際にはどうしたって「エンジンの加給遅れ」が発生するわけだが、その遅れ分は、前後の強力なモーターが巧妙に補っている。このあたりも、このクルマが文字どおりの「胸のすく走り」を実現できている理由のひとつだ。
結論としてレクサス RX500h “F SPORT Performance”は、競合となるさまざまな輸入プレミアムSUV――具体的にはメルセデス・ベンツ「GLE」やBMW「X5」あたりにまったく引けを取らない選択肢、いやむしろ上回るかもしれない選択肢として(※インテリアのセンスを除く)、ラグジュアリークラスのクロスオーバーSUVを検討している各位にハッキリとおすすめできる一台である。
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そういえば言い忘れていたが、新型RXのトップグレードであるRX500h “F SPORT Performance”のみに設定されている「ダイナミックリヤステアリング[DRS]」は非常に便利な機能だ。
これは車速に応じて後輪を前輪と逆相/同相に最大4度転舵させるというもの。低速時は、コーナリング時の旋回性や取り回しの良さを実現させ、高速域では高い車両安定性を実現させる。
これのおかげでRX500h “F SPORT Performance”の最小回転半径は、下位グレードの5.9mを大きく上回る(というか下回る)5.5mになっていて、このクラスのSUVとしては驚異的なまでに小回り性能がいい。試乗車を駐車させる際、あまりにもイメージ以上に小回りが利くため、思わず壁面にぶつけそうになってしまったことを告白しておこう。
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車両価格900万円となるRX500h “F SPORT Performance”の1つ下に位置するグレードが、同871万円のプラグインハイブリッド車「RX450h+」だ。
こちらは最高出力185psの2.5L直4エンジンに、同182psのフロントモーターと同54psのリアモーターを組み合わせた4WD車で、システム最高出力は309ps。EV走行可能距離は86kmとなっている。
日常使いに十分な航続距離を備えているEVモードでの走りは(当たり前だが)静粛にして快適であり、0-100km/h加速6.5秒という俊足でもある(ちなみにRX500hは6.2秒)。そしてWLTCモードで18.8km/Lという、車格を考えればなかなか低燃費な車でもある。
だが、良い意味での野蛮さを感じる(演出されている)RX500hと比べると、その走りは全体的に「おとなしすぎる」とも感じられる。
そのため「静かで安楽で速いレクサスのSUV」を探している人にはきわめて向いていると言えるが、そうでもない人には、具体的には「スポーツ・ユーティリティ・ヴィークルというからには“スポーティ”でもあってほしい!」と願っている人には、あまり向かないだろう。
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最廉価グレードの――といっても車両価格664万円はする――ガソリンエンジン車「RX350」のversion Lにも試乗した。
こちらのパワーユニットは最高出力279psの2.4L直4ガソリンターボエンジンで、筆者が試乗したversion LのFF車のほか、version LとF SPORTそれぞれに4WD車もラインナップされている。
こちらのグレードに関しては、エンジンを3000rpm以上回せば速くて快適なのだが、それ以下の回転域では、1700rpmから430Nmの極太トルクが発生しているはずなのに、なぜかやや力感に乏しい。また全体的な乗り味にも、500hでは感じられる「欧州製プレミアムSUVにもぜんぜん負けてないね!」というニュアンスの“いい物感”はさほど感じられない。
だからといって「悪い車である」ということもまったくないので、「レクサスのSUV」という錦の御旗を現実的な予算感で入手したいのであれば、悪くはない選択肢だろう。
とはいえ新型RXの本丸は、あくまでも「RX500h “F SPORT Performance”」だ。
欧州列強にもいっさいの引けを取らないジャパニーズ・プレミアムSUVとして、富裕な方にはぜひともご注目いただきたい一台である。
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